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    66.身を去らぬ影〜67.六条わたりの家

    • 2014.12.28 Sunday
    • 00:10
    JUGEMテーマ:古典文学

    66.身を去らぬ影

    それからというもの、宰相中将は内裏でもどこでも、身を離れぬ影のように薫君に付き添っていましたが、薫君は、真に愛情の満たされるような逢瀬はきっぱりと拒否していました。

    逢って親密に語り合っている時は、どうにも逃れようのない奇妙な心身を抱えた自らの運命を悟り、宰相中将にたいそう心を寄せる風の様子だったりするのですが、しかし離れ離れになってしまうと薫君はすぐ冷静になり、いくら難しいとはいえ、作ろうと思えば自由に作れるはずの機会をめったに作ろうとはしないのでした。

    このように、薫君がむやみに会わず冷たくしているのが、宰相中将には次第に嘆かわしくなっていくようなので、薫君は
    「思い悩んで苦しんでいる四の君に逢ってあげてくださいな」
    などと時々は勧めて、自分はそ知らぬ顔で、2人が会いやすいように暇を作っては宰相中将を四の君に逢わせているのでした。

    世にも稀な、とても正常ではありえない関係ですが、薫君に半分以上魅せられてしまっている宰相中将は次第に、薫君が見せる愛情深く気の利いたこの配慮を、自分に対する当然の愛情の現われだと理解するようになりました。

    宰相中将は、薫君と会えない時は気弱な事に様々な悩みが湧いてきてしまい辛いのですが、この辛さを他の女を求める事で慰めようという気持ちにはなれないのでした。
    ただ四の君だけは例外で、もちろん世間体は取り繕う必要はあるものの、薫君との間で満たされない思いの反動と、薫君が聞きつけはしないかという恐怖心がなくなった事で、以前よりも愛情深くしんみりと、足しげく通ってくるようになりました。
    四の君も、この上なく馴れ親しんだ気になって、すっかり宰相中将に愛情の限りを寄せるので、内心冷たい男としては当惑する思いがするのでした。

    薫君は、四の君と宰相中将の様子をみな見聞きして分かっているので「妙な事だなぁ」と、興味深くもあるが、世にも奇妙な事だとも思い、涙をこぼしていました。今となってもまだ、四の君に対して、宰相中将との浮気を知っているそぶりは少しも見せず、「私がいつまでもこの世にいることはない」と確信しているので、ただ毎日優しく語りかけるのでした。

    【解説とツッコミ】
    なんかもう救えねえ・・・宰相中将アホ過ぎるし、薫君がかわいそう過ぎる。
    宰相中将が自分に夢中になりすぎると何かと不都合なので、気を逸らすために四の君と逢う事を勧める薫君。
    きわめて冷静ではあるとはいえ、薫君は、決して宰相中将の事を嫌ってはいないと思うんですよね。自分の複雑な事情が無ければ、2人は普通に恋人になっていたんだと思います。

    それでも、自分の秘密を守るために四の君との浮気を公認。
    四の君に対して優しく語りかけている時の薫君の心境を思うと泣けてきます。



    67.六条わたりの家

    そのうちにいつものように生理が来たので、薫君は六条のあたりにある乳母の家に身をひそめましたが、宰相中将はここまでもなお訪ねてこられるのでした。

    家の近くの柴垣のそばに隠れて宰相中将が様子をうかがうと、時雨ぎみで一日中曇りだった夕方の空の様子が味わい深かったので、薫君はすだれを巻き上げて、紅色の衣の上に薄い唐綾の衣を重ね着した姿で茫然と物思いにふけっています。
    夕闇に映えたその姿は、いつもよりくっきりと華やかに見えて、ほおづえをついている腕の様子なども、玉を磨き上げたような美しさです。薫君が涙をぬぐい、

    時雨する 夕べの空の 景色にも 劣らず濡るる わが袂かな
    (時雨が降る夕暮れの空の景色にも劣らないほど 私の着物の袖は涙で濡れてしまうなぁ)


    と詠んで「いつまでもこの世にいる私の身でもあるまいし、それなのになぜこんなに嘆かわしいのだろう」と独り言を言う姿は、絵に描いても到底筆の及ぶところではありません。

    その様子を見た宰相中将は、恋心がいっそう惑乱して、そっとそばに近寄りながら歌を詠みかけます。

    かきくらし 涙時雨に そぼちつつ たづねざりせば あひ見ましやは
    (薄暗い涙の時雨に濡れながら、苦労してこうして訪ねて来ました。でも、こうでもしなければ逢えなかったですよね)


    突然現れた宰相中将に薫君はびっくりしましたが、時が時だけに身につまされて

    身一つに しぐるる空と ながめつつ 待つとはいはで袖ぞ濡れぬる
    (私の身の上の事で時雨の空を眺めていただけで、あなたを待つのが辛くて涙で袖を濡らしていたわけではないです)


    と返します。薫君が身を隠して一人物思いにふけっていたのは、宰相中将を避けていたわけではなく、生理中に自分の身体の秘密を知られないようにするためなので、宰相中将はその冷たさをしつこくなじることもできず、「こんな風にばかり冷たいお心では、私は全く生きていけそうもないと思ってしまいます」と言葉を尽くして語りかけます。

    人目を気にせず安心できる場所であるだけに、その後で宰相中将が薫君を抱きしめては臥し、あれこれ泣いたり笑ったりしては重ねた言葉の数々は、ここに再現することもできません。

    薫君は普段、近寄るのもためらうほどきちんと身だしなみを整え、きっぱりした態度は男めいたものでした。しかし一旦乱れて気を許し、夜が明けるのも知らずにこうして夢中で一夜を一緒に起きたまま過ごしていると、すべてたおやかで、親しみやすく情緒があり、美しく愛らしい様子はこの上ないものでした。

    四の君とは不本意ながら浮気関係で、後ろめたさで心が屈したままでは、くつろいで一緒に寝ていても世間普通の喜びしか味わえません。
    一方で、自分も相手も昔から見慣れていた関係の薫君が、普段とは打って変わってかわいらしく甘え、ふざけあったりして、親しみ深く柔らかに打ち解けた態度は何とも言いようもない素晴らしさです。
    「この人を世間に送り出して、他人として見なければならない時があるのは辛い事だ」と、むやみに隠して自分だけが見ていたい気がしてきます。

    「長年、普通の男の方だと見ていたのに、こうして我が物として拝見していると、素晴らしい深窓の姫君よりも一段と優れていらっしゃる。もともとのお姿もこうだったのですね。今はこっそり、女姿となって家に籠って下さいな。

    このままでは実際、思うようにお会いできる事もできませんからとても辛いです。あなたは昔から、こういう仲になる事を恐れて嫌ってきたのかもしれませんが、こうなってしまった以上、不都合な申し分であっても従うのが普通の事ですよ。
    あなたのためにも、このままの姿でいては困ることばかりでしょう」

    と、宰相中将はすっかり薫君は全く自分のものになったと思いこんでいて、寝ても起きても語りかけてきます。
    薫君は、なるほど宰相中将の言う事も一理あるとは思いますが、こういう男姿でいるよう生まれついた身が、急に姿を変えて隠れてしまうのも変だから、「それでは」と言ってすぐ決心できないでいるのを恨み嘆いては暮らしています。
    しかし宰相中将はそんな薫君の心中など考える事もなく、思うままに気を晴らしています。

    【解説とツッコミ】
    生理中だろうが関係なし!
    むしろ人目が無くて好都合!

    「来ちゃった・・・」と嬉しそうに和歌を詠みかけてきた宰相中将を発見した時の、薫君のうんざりした表情を想像すると悲しくも少し笑えてきます。オマエどこまでついてくるんだ。

    そして男の独占欲を丸出しにして女に戻れと薫君に迫る宰相中将。ホント「あなたのためにも」という言葉で説得してくる相手には注意しないといけませんね。

    宰相中将は薫君に「女に戻れ」って言ってるけど、その具体的な方法なんて何も考えてないよ多分。「男の薫君はある日突然行方不明になりました、おしまい」か、「私、実は女でした!ごめんなさい!」のどっちかでいいんじゃね?くらいだと思います。
    薫君が今までの人生を懸けて自らの身の秘密を隠し通し、男としての社会的立場を築き上げてきた苦労とか、周囲の人への配慮とか一切関係なし。

    「女なんだから女に戻ったほうが楽じゃん」
    確かに一理あるんだけど、オマエに軽く言われるとなんか腹立つ。

     

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