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    72.大晦日〜73.あらたまの春

    • 2015.01.03 Saturday
    • 08:27
    JUGEMテーマ:古典文学

    72.大晦日

    その年も暮れようとする12月の大晦日の頃、薫君は父左大臣の元に参上なさりました。
    年末の事でだいぶ取り込んでいましたが、一晩でも顔を見ないと不安に思うのが親心であり、いつ来るかと待ちわびて、やっと到着した喜びもあらわに薫君をご覧になると、あれほどの盛りの美しさであったお顔がたいそうやつれ、沈みがちな表情で現れたので、父左大臣の胸もハッと高鳴ります。

    「どうしてそれほどやつれたのか。また気分が優れないのだろうか」
    と父左大臣がおっしゃると、薫君は
    「特に苦しい所もありませんが、いつになく長く病気を患っていたせいでしょうか」
    と申し上げます。父左大臣が
    「それは大変だ。祈祷をまた始めなければならん」
    と、しかるべき人々を召して、御修法やら祭やらお祓いやらをするように命じるのを見聞きするにつけ、薫君は
    「あぁ、こうまで私をご心配になるのに、私が跡も残さず消え失せてしまったら、どれほど悲しまれることだろうか」
    とお察しするとどうにも耐えられず、ほろほろと涙のこぼれ出るのをどうにか紛らわしています。父左大臣は

    「お前が男女逆転した性格で育ちはじめた頃、これは災難だとも思っていたので、命も尽きるような気がするほど心配してきた。それが今では官位をきわめ、内裏に出仕なさる身分となり、公私につけ他人に褒められ、面目をほどこしている。
    取るに足らぬ私の名誉を高めてくれて、最初の頃の嘆きも慰められて、幸運がついているのだろうと心配も晴れた。

    そんな今となって、こんな風にいつになく病気がちに見えるようになったし、それに何よりも、物思いにふけって嘆き沈んでいる様子がたいそう辛く、生きている張り合いも無くなってしまうよ」

    といって泣いておられます。薫君も耐えがたいほど悲しくて

    「私が何を嘆いておりましょうか。気分がいつになくはっきりしませんが、それだけの事です。このようにご心配下さっているのに私の体調が思い通りにならず、いずれ父上とお会いできなくなってしまうのではないかと、それを案じていただけです」

    と申し上げて父を慰め、食欲も無いのに我慢して父君の御前で物を召し上がりなどするので、父左大臣も「あぁよかった」と慰められて、一緒に食事をお食べになります。
    一方で母上の方はそこまで神経質になっておらず、どんな事も気に留めずに平然としております。

    【解説とツッコミ】
    こっそりと行方不明となり、出家してこの世を捨てる事を人知れず決意した薫君。
    出家前の身辺整理として、まず大晦日に父左大臣のところに挨拶に行きます。やつれた自分の子供の姿を心配する父と、父を心配させまいと食欲もないけど無理して食べようとする薫君の気遣いが泣けます。



    73.あらたまの春

    年が改まると薫君は、屠殺場に引かれていく羊のような気分で「いつまでこうしていられる身だろうか」とお思いになり、人生最後のつもりで御車を下簾や台まで新しく仕立て、供の家来などにまで配色を工夫した装束を与えました。

    ご自身の身づくろいは言うまでもありません。束帯の上着や下に着る服の紋様まで、氷の解けた池の水面に出る波の初花のように輝いている上に、動作や心構えまでたいそう気を配り、まずは父の左大臣邸に参上して、父母に新年のご挨拶を申し上げます。
    薫君のお顔が光り輝いて見える美しさを、父母は「今年はいつもより素晴らしい」とご覧になり、親としては不吉な言葉も口に出せないほどです。

    内裏に参上なさっても、薫君の様子は見る人の目を驚かすばかりです。宰相中将も他人よりは際立った容姿ですが、ちょうど内裏に参上なさって薫君を見かけると、これほどの美しさで内裏の中を立ち回り、世の人々の期待や評判がこれだけ高いと、姿を女に変えにくくなるのではないか、などと宰相中将としては心配になってしまいます。

    宰相中将がじっと薫君に目を付けていると、薫君はごく普通に振る舞いながら、宰相中将の方には行かないよう巧みに避けて、宣耀殿にいる光君のもとに行ってしまいました。

    宣耀殿の方にも地位の高い人々がたくさん出仕していて、宰相中将の前に現れてはあれこれと挨拶しお世辞を言ってきます。今はこのような人づきあいも邪魔で心苦しいのですが、立場上どうしようもありません。琵琶を勧められた宰相中将は琵琶を弾き、それに薫君が「梅ヶ枝」の謡曲を歌いますが、その声はとても素晴らしいものでした。

    宰相中将は、薫君に光君の面影を投影して心は慰められたのですが、「光君はあの時呆れるほど、強情に私をはねつけなさったなぁ」と昔の事を思い出すと、落ち着かない気分になって退出しました。

    こうして薫君は、内裏の季節行事ごとに参上しては忠実に万事を処理なさっているので、公の政治の会議などで帝は、年老いて身分も高い高官などよりも、薫君の言い出す事の方がただ優れたことだとお考えになります。世にも稀なほどの帝のご寵愛は、頂点に達しているのでした。

    【解説とツッコミ】
    出家を決意し、もう先は長くないと身だしなみを整えて残りの日々を過ごす薫君。
    その様子の素晴らしさに誰もが感動し、帝の信頼もマックスに。
    見た目はこれ以上なく最高だけど、内面はズタズタ。それを知るのは薫君本人だけです。

     

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