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    7.裳着・元服〜8.若君の侍従昇進

    • 2014.10.22 Wednesday
    • 00:20
    JUGEMテーマ:古典文学

    7.裳着・元服

    左大臣の屋敷の中で、できるだけ人目に触れないように育てられてきた若君(妹)でしたが、若君(妹)の学問の深さや素晴らしい容貌は、自然と噂となって世間に広まっていきました。そのうち帝や東宮(皇太子)までも

    「そこまで何事にも優れている子供なのに、今まで帝に謁見もさせず、朝廷に出仕もさせないのはなぜか」

    と言い出し、ぜひその若君(妹)をご覧になりたいと、父の左大臣に何回も催促されました。しかしそれは左大臣にしてみれば非常に困った事で、情けなくみっともない気持ちでいっぱいでした。

    左大臣が、まだ幼いからと言い訳して若君(妹)を一向に公の場に出そうとしないので、帝のほうでは
    「おそらくこれは、元服前の子供の格好のままでは人目に触れさせたくない、という事なのだろう」
    と無理やり若君(妹)に五位の位まで授けてくれて、早く元服させて朝廷に出仕させよと再三希望されます。

    結局、どう言い訳しても朝廷に出仕させないわけには済まない状況に追い込まれた左大臣は、
    「こうなった以上、これはもう、成り行きに任せるしかない。これも前世の因縁で決まったことだろうから、私の子供たちは最初からこういう風に生きていく運命だったんだ、きっと。」
    と思い切った気持ちに吹っ切れて、今年は御裳着(女子の成人式)、御元服(男子の成人式)を準備することになりました。

    裳着と元服の儀式の日には屋敷を一段と美しく飾りつけ、まず姫君(兄)とその母を東の建屋から移動させます。裳着の儀式で最も重要なのは姫君が着る裳の腰紐を結ぶ役の人で、それは第三者に依頼するのが普通なのですが、姫君(兄)の祖父が勤めました。これはやはり、他人にお願いするのはマズいと父の左大臣がお考えになったからでしょう。

    この様子を耳にした人達は、なぜ腰紐を結ぶ役を身内が勤めるのかという理由に思い当たるはずもなく、ただ「私たちは若君と姫君を勘違いして聞き間違えていたんだな」とみんな納得しました。

    元服の儀式で若君(妹)に冠をかぶせる役を務めたのは、父左大臣の兄である右大臣でした。元服して髪を結い上げたときの美しさは、かねて予想はしていましたが一層群を抜いており、その世間にない素晴らしい容貌を右大臣が絶賛されたのも当然のことでした。

    この右大臣には四人の娘がいました。長女は帝の妃に、侍女は東宮の妃になり、三女と四女は未婚でしたので、右大臣はどうやらこの2人のどちらかをこの若君(妹)と結婚させようとお考えのようです。
    元服の儀式のご祝儀や返礼の贈り物などは、まったく善美を尽くした素晴らしいものでした。

    【解説とツッコミ】
    いずれは人知れず出家させようと考えていた左大臣のプラン、モタモタしてるうちにいきなり崩壊。でもそりゃ帝にここまで言われて、まだ何もしてない子供なのに五位の位までもらっちゃったらどうしようもないよな。父左大臣、もうやけっぱち。
    腰紐を結ぶ役を身内にお願いする、という芸の細かい設定がとても素晴らしいです。

    そして最後、女である若君と自分の娘を結婚させようと考える右大臣が登場。
    えええ!?それやばいでしょ絶対!?いくら何でも無理でしょそれは!?



    8.若君の侍従昇進

    ここで私は、原文には無い大きなアレンジを加えたいと思います。
    それは、男女が逆転したこの主人公の兄妹に名前をつけることです。

    日本の古典文学を読みづらくしている最大の悪習が「人の名前を肩書きで呼ぶ」ことだと思います。この物語でも、男性の格好をした妹の呼び名が「侍従」「中納言」「右大将」と出世に合わせてコロコロと変わり、女性の格好をした兄の呼び名も「尚侍」をはじめ何個かあります。しかもこの物語の場合、男女が逆転している関係上、単に「男君」「女君」っていきなり言われても、それが「男性の格好をした妹」の方を指すのか、「本当の男である女装の兄」の方を指すのか分かりづらい時があります。そこで、私の独断で今後このブログでは

    女性の格好をした兄=「光君」
    男性の格好をした妹=「薫君」


    という固有名で呼ぶことにします。この呼び名は私が勝手につけたもので、他の本には一切出てきませんのでご注意ください。


    元服した薫君(妹)は女であることを隠したまま朝廷に出仕し、その年の秋の人事考査(司召)で侍従に任命されました。天下の男女は誰でも、薫君を一目見るといつまでも忘れられず、素晴らしい方だと思い込んでしまうようです。だから帝は特別に薫君のことを可愛がっていますが、もともと左大臣という高貴な人の子供であるし、扱いが格別であるのもごく当然な事と思われます。
    薫君は琴・笛などの音楽でも、漢文の作文でも和歌でも、ちょっと書き流す筆遣いまでも他に類のないほど優雅で、出仕している様子の愛らしさときたら、容貌は当然のことながら立ち居振る舞いも理想的です。しかも世間の常識や朝廷の儀式にも詳しいという賢さであり、全てにおいて抜群に優秀すぎるので、父の左大臣もいつまでも

    「さてどうしたものか、これがこの子の運命なのか・・・」

    などと愚痴を言っていても仕方がないと思うようになり、状況に慣れて心の整理がついてくるにつれ、うれしく愛らしいという気持ちの方が次第に強くなってきました。

    一方薫君の方は、幼いうちは自分の身がどうだとも気にせず、「こういう人間も世間にはいるのだろう」と思い込んで、心のままに人に対して振舞っていたのですが、だんだんと他人の様子を見聞きしていくうちに苦しみを自覚するようになってきました。自分の心と体のありようは奇妙で呆れはてたものだと思うようになったものの、かといって今さら考え直してもどうしようもないので

    「どうして自分は奇妙で風変わりな身に生まれついてしまったのか」

    と独り言として胸の中でつぶやいています。あまりの憂鬱さに、振舞いはきちんとしつつも人からは距離を置いて物静かに勤務しているのですが、その様子がまた周囲の人の目からするととても立派に見えるのでした。

    【解説とツッコミ】
    ようやく物語の冒頭部分が終わって男女逆転兄妹という舞台設定が整い、このあたりからそれぞれの人物の心理のすれ違いが面白くなってきます。まずは父親と息子(娘)の心のすれ違い。
    基本このお父さん左大臣は、決して悪い人ではないんだけどちょっと考えが足りていない所があります。とても優柔不断で、全然問題は解決していないのに、目の前の危機が改善されればそれだけでホッとして喜んでしまい、さっきまで深刻に悩んでた問題の事をコロッと忘れてしまう。半分やけっぱちで薫君を出仕させたくせに、薫君の評判が非常に良いのでだんだん親バカ心がくすぐられ、だんだん誇らしげな気持ちすら生まれてきます。
    一方で薫君。こちらは純粋無垢な子供時代を過ぎて、ようやく自分の心と体の奇妙さを自覚するようになります。で、何となく距離を置いて人付き合いをしていたら、それをまた周囲の人が奥ゆかしさと勘違いしてほめたたえるという始末。

    もうホント何一つ噛み合ってない。でも現実の人間関係でもこういう状況って結構ありますよね。

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