スポンサーサイト

  • 2016.04.30 Saturday

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 0
    • -
    • -
    • -

    24.兄妹の仲〜26.物思う宰相中将

    • 2014.11.02 Sunday
    • 14:38
    JUGEMテーマ:古典文学

    24.兄弟の仲

     年が明けて正月一日頃(旧暦。現在の1月末〜2月頃)、空は霞んで春らしくなってきているものの、まだ雪がちらほらと降る風雅な景色の仲を、左大臣が光君の住む宣耀殿にお出かけになると、薫君も来ていました。

     かつて二人が左大臣の屋敷で住んでいた頃は、それぞれの母親が互いに競争心を抱いていたために、光君と薫君が会って話す機会はほとんどありませんでした。しかし今は「二人の他にもう私の子供はいないのだ。私の寿命もいつまでか分からないのだから、普通ではない二人の身体の秘密も、これからは他人と相談するのではなく二人で話し合って暮らすようにしなさい」と父左大臣は二人に諭すのでした。

     今までの光君(女装)は、たとえ妹の薫君(男装)と会う時であっても、薫君を日よけの御簾の中までは入れますが、それでも部屋の中で御簾を挟んで会話するほどの恥ずかしがりやでした。
     しかし女東宮にお仕えに出るようになってからは光君も世間を知り、また光君の出入りの際に薫君が送り迎えをするので、そのうちに慣れ親しんできて、今は几帳を隔てただけで親密にお話をするほど親しくなったのでした。

     薫君は光君の世にも稀な美しさを、自分の事は棚に上げて「この人の美しい姿を、男の女装として見るのではなく、普通の女性として見てみたい」と惜しく悲しい事と思っているのでした。光君のほうも、薫君の様子を見るたびに同じように胸を痛めています。このようにお互いに相手の身の上を案じている様子は、もちろん兄妹だから当然のことかなのもしれませんが、とても親愛感に満ちた感動的なものでした。

    【解説とツッコミ】
    今さらですが、古文の世界に慣れていない方のためにちょっと解説。

    まず当時、貴族の女性は他人に顔を見せるのを極端に恥ずかしがりました。今で言うと、厳格なイスラム教徒の女性が一日中ベールで顔を隠してるというのと同じ感じだと思います。
    ですので、男女が会話するには、まず取次の侍女を通じた文通から始まります。それでやっと直接会える事になっても、男が入れるのは縁側まで。そこで縁側に腰掛けて、外壁代わりのすだれ(御簾)の外から語りかけます。

    何とか家の中に入れてもらえても、家の中もすだれで部屋が仕切られていて、やっぱり女性との会話はそのすだれ越しです。光君は最初、血を分けた兄妹である薫君と会う時でさえ別室からすだれ越しだったと書かれていますが、これが「同じ部屋の中で几帳越しに会話するほど親しくなった」と書かれています。

    なんだよ、それでもまだカーテン越しかよ!?

    几帳というのは、鉄棒みたいな形に組んだ木に絹の布を吊るした、移動式簡易カーテンみたいなものと思ってください。同じ部屋に入ってもなおカーテン越しなんですね。とにかく、男と女が直接顔を合わせるなんてのは肉親同士でもめったにないという世界だったようです。しかも実を言うと、万が一男が几帳を越えてきてしまったり、几帳が偶然風で巻き上がったりしてしまってもまだ女性には最後のガードがあります。「扇」です。

    いやはやこの顔隠しの執念たるや、たぶん当時の世間知らずのお姫様だったら、顔を見られたらそれだけで妊娠するとでも思ってたんじゃないでしょうか。あと、美人美人って言ってるけど、これだったら顔の造りなんて全然関係ない。衣装・お香・筆跡・文章能力・あとは高い身分が醸し出すレア度感、そういう飾り物で

    「カワイイは、作れる」

    そういう時代だったんだと思います。だから身分の高い金持ちの女性は基本「全員美人」。

     ただ一方で思うのは、「とりかへばや物語」でも「源氏物語」でもそうですが、ここまで厳重にガードしてるにも関わらず、もうポンポンといとも簡単に男女の間違いが起こりまくるんですよ平安文学。物語だから誇張はあるにしても、ホント平安時代大丈夫かと。

     まぁ壁と言っても、所詮はすだれだしね。男が手篭めてやろうと決意して、ちょっと恥を捨てて後先考えずに突撃したら十分行けてしまう訳です。
     それにみんな本当に若い。薫君はいま中納言という役職で、これ今で言ったら○○省の大臣といったクラスのめちゃめちゃ高い地位だけど、彼(彼女)17歳かそこらだからね。今なら高校生ですよ薫君。結婚して社会人として立派に社会に認められて金もある10代なんて、そりゃ男女の間違いなんて簡単に起こるに決まってますって。

     あと重要なのが「照明が無い」ってこと。夜6時から朝5時まで11時間真っ暗。しかも「何が起こった?暗くて見えない?」って時に、マッチもライターも無い時代、明かりを用意するまでにはかなりの時間がかかります。
     そのため、おそらく夜這いの成功率が現代とは比べものにならないほど高かったんだと思います。成功率が高いと当然心理的なハードルも下がり、今の人がイメージする夜這いと比べて、昔の人のイメージする夜這いはもっとカジュアルなものだったのではないかと。
     そしてそれはきっと、明治時代になって電気照明が生活に入ってくるつい100年ちょっと前まではごく普通のことだったはずです。
    いいなぁ(笑)

     てなわけで、昼は顔も見せないほどのガードの固さで、まだるっこしく和歌のやり取りとかしてるのに、いとも簡単に夜這い一発で間違いが起こる平安文学の世界。
     逆に言うと「高校〜大学生くらいの年代の人達が貴族として社会人やって金持ってて、夜は11時間真っ暗の世界」っていったらもう、毎日が大学のテニスサークルの夏合宿みたいなもんですよコレ。だからこそ、女は一切顔を見せないくらいの極端なガードの固さで、かろうじて秩序が保たれるレベルだったのかもしれません。



    25.父君の嘆き

    光君は部屋の中の、几帳を三重に巡らせた中にいました。今日の全員の衣装は梅がテーマで、侍女たちは梅の配色の5枚重ね着の上に紅梅の織物の上着を着ていたり、萌黄色の3枚重ね着のままでいたり、春にふさわしく全体で統一された配色はとても美しく工夫されていました。

    一方で薫君は紫の指貫(袴)に紅色の艶やかな下着を裾から少し見せて、きちんと座っている姿はいつもより華やかで、愛嬌はあたりにこぼれんばかりの親しみやすさでした。そんな姿をご覧になる左大臣は、胸が苦しくなる一方の時もあれば、つい笑みも浮かんで悲しみも忘れてしまう時もあるという複雑な心境でした。

    左大臣が几帳の中をご覧になると、光君は薄い紅梅色の下着の上に濃い紅色の着物を着て、一番上には桜色の上着を羽織っています。そして紅梅柄の扇を持って隠すようにしているお顔は薫君の美しさと全く同じで、見分けられないほど似ています。
    ただ、こちらはもう少し上品で、優美な点が一段と目立つようです。髪はつやつやとして乱れがなくゆったりと流れ、背丈よりも60cmほど余るその毛先が白い下着にくっきりと引き立って見えるところなどは、どこも絵に描いたような美しさですので、左大臣は見るたびに「あぁ、何とも言えない・・・」と胸がふさがる思いです。

    この容姿が平凡で不満もあれば、尼や法師にして深い山の中で人との交流を絶たせてしまっても惜しい気持ちは無かっただろうに、このような優れた2人の容姿を見てしまっては、父左大臣の嘆きも悲しみも深く、いずれにしても涙がこぼれてならなかったのです。

    【解説とツッコミ】
    例によって、兄妹2人の完全無欠の美しさをこれでもか!とばかりに強調する描写です。
    この「完全無欠の主人公」ってのは源氏物語以来の平安文学の基本パターンですね。



    26.物思う宰相中将

     日が暮れて月がたいそう明るいので、父左大臣は「お琴の腕前は最近どうですか?薫君の笛の音に合わせて聞きたいものです」と、光君に筝の琴をお勧めし、薫君には横笛をお渡しになりました。
     薫君が吹くいつもの澄んだ清らかな笛の音色は、はるか空の雲をかき分けて響き渡るかのように美しく素晴らしく、左大臣はそれだけでも感動で涙が止まらないのに、さらにそれに弾き合わせる筝の琴の音が、これまた負けず劣らず響いていきます。

     いつも光君のあたりを離れずうろついている宰相中将がこの合奏を耳にして、「笛の音も筝の琴の音も全く感動的だ。現世にあろうとも思えない兄妹の才能だ。きっと顔も姿も似通っているのだろう」と思って聞いているうちに、光君への恋しさのあまり宰相中将も涙がこぼれてきます。

     我慢しきれなくなった宰相中将は「真屋のあまり」という詩を吟じながら、庭の池にかかった反り橋の辺りに入っていきました。すると薫君は笛を琵琶にすぐさま持ち替えて「入ってきなさいよ」と掻き鳴らし、宰相中将は「分厚い几帳があるのが残念だ」とは思いながらも心を躍らせて中に入ってきました。しかし中に入ってみると、光君の父の左大臣が厳めしい顔で端に座っていたので、ガッカリして気分も醒めてしまいました。

     そのうち他の高位の貴族達も左大臣のもとに集まって宴会になりましたが、彼らが左大臣と会話をしている間にも、宰相中将は先ほどの筝の琴や琵琶の音ばかりが耳について、「あれほどまでに、何をやらせても一流の薫君を見慣れているんだから、どれほど自分が優れた音で琵琶を掻き鳴らしても、光君の耳には入らないだろうなぁ」と思うと、誠に妬ましく悔しくもあり、琵琶を弾くように他の人がどんなに勧めても、宰相中将はきっぱりお断りになりました。

     光君に仕える侍女たちは、薫君ほどではないが、普通の人よりはこの上なく優れている宰相中将の事を「慕わしく優美な方だ」と思っていたそうです。

    【解説とツッコミ】
    風情があっていいですねこのシーン。次第に絆を強くする同じ秘密を抱えた兄妹と、その関係性を象徴するかのような父の前での合奏。この兄妹愛がこの物語のテーマの一つでもあります。
    そして音楽で気分も高揚して、今がチャンスとばかりにアプローチをかけ、一瞬「やった!」と喜ぶも入った部屋に父親がいてゲンナリする宰相中将。がんばれ宰相中将。

    PR

    calendar

    S M T W T F S
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    27282930   
    << September 2020 >>

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM