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    33.秘密の逢瀬〜35.中納言の嘆き

    • 2014.11.06 Thursday
    • 00:15
    JUGEMテーマ:古典文学

    33.秘密の逢瀬

    宰相中将は嘆いてはイラ立ち、もう人目も構わないとまで責め苦しんでいるので、左衛門はつい心弱くも説き伏せられてしまい、薫君がいつもの内裏の宿直をお勤めになる日に時々、夢中で宰相中将を屋敷の中に導き入れてしまいます。しかし四の君はそのたびごとに涙をこぼされます。

    「少しでも人に様子を聞きつけられてしまったら、どうして生きておられましょう」と四の君は思案に暮れてはいるものの、一方でこのわずかな出会いの時には、宰相中将の方が驚くほど泣き惑いながらじれったそうにしていて、それが宰相中将にとってはとても可愛く思えるのでした。かくして回数を重ねるうちに、四の君も次第に男女の仲を理解してきたようです。

    そのうち四の君は、薫君はたいそう立派だけれども、人目のある間だけ愛情が深いように格好良くゆったりと振舞っていて、どこかよそよそしいと感じるようになりました。
    一方で宰相中将に対しては「これほどまでに激しく、死ぬほど思いつめて一筋に愛してくれる人もいるんだなぁ」と気を引かれるものの、「ほんの少しでも人に漏れ聞こえてしまったら」と恐ろしく、何となく恥ずかしい思いがします。でも次第に、宰相中将の人知れぬ愛情が理解できなくもない気持ちになってきているのが、自分でも「辛いことよ」と思えるのでした。

    【解説とツッコミ】
    愛情に肉体関係は必要か、不要か。

    この物語は、恋愛における肉体関係の意味と、心理に及ぼす影響について妙に生々しく描いてくれます。

    ハッキリ言って、薫君と宰相中将のどっちが彼氏として良いかと言ったらもう間違いなく薫君。
    「これほどまでに激しく死ぬほど思いつめてる」とか言ってますが、宰相中将はこれ同じ事を他の女の人にも平気でやるからね。だいたい、男なんて女の人の話全然聞かないのがほとんどなんだから(私も含めて)、一日中ずっと話し相手になってくれて、病気になったらつきっきりで看病してくれる男なんて、私が言うのも何ですがホント希少種だし大事にした方がいいと思う。

    でも、四の君は男女の何たるかを知った瞬間から、今まで何の不満も無かった薫君に対して物足りなさを感じてしまうんですね。そして体目当てのアホな宰相中将の方にどうしても魅かれてしまう。いや人間って本当に業が深い。



    34.四の君妊娠

    こうして物思いをして憂鬱な気分で暮らしているうちに、四の君が妊娠三、四ヶ月の身体になった事に侍女たちが気づき始めました。

    父の右大臣が「この数ヶ月、特にどこが悪いというわけでもないのに、このように具合が悪いというのは、もしかして妊娠ではあるまいか」とお聞きになっても、最初のうちは確実には答えられませんでしたが、御湯などを差し上げる侍女たちがよく見届けた上で「そうでございました」とお伝えすると、右大臣はたいそうお喜びになって顔いっぱいに笑顔を浮かべました。

    右大臣は「まだ安産のお祈りなども全然していないぞ」と騒ぎ出して、「薫君の愛情はわき目もふらずに真っ直ぐだったよ。あれほどの美男子だったら、数えられないほどの浮気の連続であっても咎めようがないのに、少しの迷いもなく私の娘に真実を尽くしてくれた。こんな事は世にも稀で、世間の例にもしたいほどだ。まして薫君の顔に似た孫が生まれたら、我が家の光にもなるだろう」と涙ぐんで言い続けています。そして高笑いをしながら四の君のところに行き、几帳の前に座られました。

    その時、四の君はちょうど苦しくて休んでいたところでしたが、父の右大臣が来た気配がするので起き上がりました。それを右大臣は「うれしい」と思ったようで、四の君のそばに寄ると「気分はどうだ。妊娠したなんて今まで聞いていなかったよ。聞いていたら安産のお祈りなどもさせればよかった」と言って大いに嬉し泣きをするのでした。

    四の君は「妊娠!? 最近はいつも気分が悪かったけど、宰相中将と会うようになってからは、いつも嘆かわしく心細い思いでいたので、そのせいだと思っていて気づくのが遅れたわ。もし本当に妊娠だったら、薫君はどう思うだろう?」と焦りました。そして、それでも今までと同じような様子でずっと薫君と顔を合わせなければならないことの辛さを思うと、四の君の心中は混乱して、汗みどろになってしまいます。その一方で、父の右大臣はそれを見て「あきれた恥ずかしがりようだね」と言って「とても嬉しい」と、この上なく喜んでいるのでした。

    お帰りになってからも、父右大臣はあれこれと果物などを届けるなど細やかに気を遣って四の君のお世話をして、奥方にも「早く行って見てやりなさい」と催促します。奥方が「本人が恥ずかしく思ってるんだから、あまりあからさまに言いふらさないで下さいよ」と言っても、父右大臣は

    「なんだお前は。大将に嫁いだ長女や帝の妃になった次女の事ばかり心配して、四の君の事はずいぶんといい加減なんだな。こんなにはっきりするまで母親が娘の妊娠を知らないなんて。四の君は私が長年大切に育ててきた娘だからな、今まで育ててきた甲斐があったと、とても胸がすっきりしたよ」と言います。

    そして乳母達を呼んで「薫君はまだ四の君の妊娠をご存じないかもしれない。今日はお日柄も良い。夜お帰りになったらそれとなくお伝えするのだ」などと言っているうちに薫君が帰ってきました。

    「それ見ろ。今日も夜遅くにならず、薫君はこんな早い時間からいらっしゃる。薫君の心がいい加減で浮わついていたらどんなに心が痛むだろう。四の君が帝の妃になっても何の意味があるだろうか。それよりもこの人に大切にされている方がずっと素晴らしい人生じゃないか。私もよくもまぁあの時、薫君を婿にもらおうと随分うまい事を思いついたものよ」

    そう自慢し、得意気に言いふらして回っている右大臣の様子も、事実を考えれば気の毒なものです。

    【解説とツッコミ】
    ついに、最も恐れていた事態が発生してしまいました。四の君が妊娠。もうどう頑張って言い訳しても浮気確定。DNA鑑定とか無いこの時代でも、100%絶対に間違いない。だって夫は女なんだから。
    そんな深刻な事情がある事など全く知らず、妊娠を心から喜び周囲に言いふらして回る父右大臣の無邪気さが哀しい。さぁどうする薫君。

    ちなみに解説しておくと、この時代の結婚は通い婚で一夫多妻でした。常に一緒に暮らすのではなく、夫が夜になると妻の家だったり部屋だったりに通う方式です。そして一夫多妻なので、夫が毎晩欠かさず通ってくるなんて事はむしろ珍しかった。父右大臣が喜んで言う「薫君はこんな早い時間から来る」というセリフには、そういう結婚形態が背景にあります。



    35.中納言の驚き

    右大臣が大喜びで「早く薫君の耳に入れよ」とおっしゃるので、その日の晩、薫君の夕食の給仕をしながら四の君の乳母が薫君に四の君の妊娠を伝えました。薫君はハッと仰天して「あきれた事だ」と思わず顔がサッと真っ赤になりました。それを見た乳母は「恥ずかしいとお思いになったのだろう」と理解して「落ち着いているとはいっても、まだやはりお若い方だから」と可笑しくてかわいいと思うのでした。

    四の君は、あまりの辛さに汗も涙も一緒になって夜具をかぶっています。薫君も、いつもと同じようにその隣に横になりましたが、それで一体何をお話できるのでしょうか。薫君はこう考えます。

    「世間とは違う自分の身を普通の人のように偽って今まで過ごしてきたが、いつかは出家しなければならない身だって事は、最初から分かっていたことじゃないか。

     でも、もしここで私が出家してしまったら、今まで私の母は、私の存在があるからこそ父左大臣からも大事にされ、他人からも馬鹿にされずに暮らす事ができていたのに、そんな母を見捨てる事になってしまう。それに、母が私を心配するあまり心の闇に囚われてしまうかもしれない。

     父上だって、私の事を役立たずなどとは決して思わず、一日でも私の姿を見ないと心配になるほど愛してくれている人達だ。もしこの2人を捨てたら罪深いものになるだろうな」
    そう思うと、現実がどんなに辛くても、さすがにきっぱりと世を捨てて出家する決心もつきません。

    「このまま世間に留まっていたら、いつかは秘密がばれて不幸になってしまうだろう。一般の人と心の造りが違っている自分自身が本当に情けない。私の世間の評判は何も不足が無いのに、男女の事についてだけは馬鹿げた奴だと思っている人もいるのが、何とも悔しい事だ。こうして四の君と夫婦として暮らしながら、まだ肉体関係も持っていないという事を、怪しみ不思議がる人もきっといるのだろう。」

    などと考えたり、

    「とにかく、これは私の身に降りかかった前世の憂鬱な罰なのだ。どうせ人生なんて長くはないんだし、こういう身に生まれたからには独りでいつづけようと思っていたのに、悔しくて残念だ」

    などと考えたりしながら、少しも眠らずに夜を明かしましたが、やはり世間から姿を隠す手段は思いつきません。結局、

    「一体誰が四の君の不倫相手なんだろうか。こういう事があってもなお何食わぬ顔でこの屋敷に出入りし、あいつは妻を獲られたのに全く気づいていない馬鹿な男だ、という目で私を影から見ている男が、どこかにきっといるんだろう」などと思いながら、薫君はつくづく悩み明かしたのでした。

    【解説とツッコミ】
     不倫確定にも関わらず、四の君を責めるのではなく自分自身を責めてしまう薫君。普通だったら堂々と慰謝料の一つでも請求できるシチュエーションですが、薫君はどうしても四の君を責める気にはなれません。

     それは、女である事を偽って夫になってしまっている自分の異常性、その異常性に四の君を巻き込んでしまったという後ろめたさなんでしょう。あと、男が妻を奪われるのと、女である薫君が妻を奪われるのとでは、心は男だとはいえ、感じる重大性がどこか微妙に違うのではないかとも思います。

     いずれにせよ薫君はどんどん追い込まれていきます。
    さぁ、薫君の明日はどっちだ!?

     

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