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    52.右大臣家の人々〜53.背を向け合って

    • 2014.11.30 Sunday
    • 16:37
    JUGEMテーマ:古典文学

    52.右大臣家の人々

    右大臣家では、四五日と言い置いて出かけた薫君が十日以上も現れずにどこかに籠ってしまったので、不審に思い不安で思い悩み、右大臣に至ってはお食事もなさらずに嘆いています。四の君は「私のせいでこのようにお悩みなのだ」と気の毒で悲しくてなりません。

    右大臣の家中が「薫君はいつも心細そうにしていて、世の中に生き通す事はできないとばかりお考えの方だから、とうとう出家をご決心なさったのではないか」とあれこれ思い乱れ大騒ぎになっているのも知らず、宰相中将は薫君が不在なのを「よい機会だ」とばかりに涙まじりに四の君に恋心を訴えます。
    侍女の左衛門は気弱くも、宰相中将を四の君のもとへ夜な夜な手引きして案内してしまい、四の君としてはそれが辛いと思う気持ちはもちろん変わらないものの、また一方で「これこそ本当に深い愛情というべきなのだろう」とも思うようになっていくのでした。

     宰相中将にしてみると、浅からぬ複雑な感情を感じつつも自分に身を任せ、お腹などがふっくらした様子で苦しみ思い乱れている四の君の様子は愛しくてなりませんが、それなのに人目を忍んで密かに会うしかない状況に惑乱するのも当然のことです。お互いに涙にくれながらお別れになる夜が重なるにつれて、苦しみは増すばかりです。

     さて、薫君が帰宅したとなると右大臣は「おお、そうか」と大あわてで掃除までも自らやかましく注意し、「侍女たちは、いつもよりきれいに着飾り化粧もせよ」などと大騒ぎです。四の君にも「なぜこのように横になっているのか」と無理に起こして、あれこれ身づくろいさせて座らせるのですが、四の君にしてみるとそれが気恥ずかしく心苦しいのでした。

     薫君が四の君の部屋に入る気配がしたので、右大臣が物陰から覗いてみると、十数日の間に薫君の容貌は一段と美しくなられたようです。華やかに愛嬌がこぼれるばかりで、ゆったりとお座りになると四の君のそばににじり寄り、

    「ほんの少しの間滞在しようと思っていた山里でしたが、見たい書物などがあったものですから。とても途中でやめるわけにもいかずにいた間、心配だと訪ねてくださるかと、あなたのお心が知りたくて日を過ごしていました。でもそうしているのも空しくなって、かえって寂しくなり、きまりが悪いですが帰ってきましたよ」

    と申し上げます。四の君は答えようもなくて、いよいよ横を向いてしまいます。顔を隠すようにして、なおお答えにならないので薫君は四の君を横目でご覧になりながら

    「そうですか。たいそう私の事をお嫌いになるのですね。しばらくぶりなので考え直して下さるかと思っていましたが」

    などと、別に四の君にひどく恨みがまくするような様子ではなく、ただ悩みの種が増えたといった様子でいるのが、四の君にとってはもどかしい気がします。

    【解説とツッコミ】
    これはいかんよな薫君・・・。この状況だとむしろ「テメェ浮気しやがったな、ふざけんなよ」と叩きのめしてくれた方が、四の君にとってもまだ気分がスッキリするんじゃないかと思うけど、薫君の態度は

    「いや俺はね、別にお前を恨んでるわけじゃないんだよ。俺はただ悩みの種が増えたなぁと思ってるだけで・・・そうそう、私がいない間、探してくれると思ってずっと待ってたのに全然探してくれなかったよね。俺バカバカしくなって帰ってきちゃったよ。あーあ、しばらく距離を置いたら冷静になるかと思ったら、いまだに俺の事嫌いなのね君」

    ・・・ってコレ、めちゃめちゃカッコ悪い。なるべく自分の本心は隠したままで、自分にとって有利な精神的立場を維持しようとしてるだけだよねコレ。相手の事なんて全く考えてない。
    宰相中将は宰相中将でクソのような浮気野郎だけど、こんなカッコ悪い姿を見せられたら、苦難を乗り越えて自分に会いに来てくれて全身全霊で抱きしめてくれる宰相中将の方が魅力的に映ってしまうのは当然だと思います。



    53.背を向け合って

     四の君の衣装は袖口や裾の端までも上品で優美かつしなやかで、髪がふさふさと上着の裾の方に流れるようにかかっていったその端の具合は、絵にも描ききれないほどの美しさです。
     限りなく愛らしいその姿はいくら見ても見飽きない気持ちがするのに、薫君がうまい風に言いつくろっては四の君に親しく慣れ近づこうとしないので、それを物陰から見ている親の右大臣の心としてはとても恨めしく胸も痛くなる思いです。しかし「二人並んだ時の素晴らしさは抜群だ。他の男では見劣りがするよ」と未練がましく判断しています。

     四の君が横になっても、かつては親しみ深くしんみりと語り合っていろいろ約束し合い、それなりに深い愛情を示されていたのに、それにひきかえ今は、当然の事ながらそれほど細やかでなくなっていて、その事を薫君自身も恥ずかしく思い気が引けています。

     また、それでもまだ関係を修復しようという気持ちが無いわけでもないので、今やお互いの心が離れ離れになってしまったのを「何だかんだ言っても、夫婦の肉体関係が無い事を、薄い愛情だとお考えになっているのだろう」と思うと、当然四の君を恨む事ではないので、薫君にしてみればひたすら我が身を恥ずかしいものと思い知らされるのでした。

     鏡に映る自分の男姿を恨んでも、「四の君が単におとなしいだけの女性だったら、ただ親愛感を込めて話し合っているだけでも十分だっただろうが、彼女には自分よりも深く気を引かれている人がいるのだろうなぁ」と思うと情けなくなります。
    かといって直接言葉にして恨んでも仕方がなく、そもそも薫君は所詮この世はかりそめのものだと思っているから、薫君は「よいよい、このままで」と全てを諦め、辛い事も辛くはないと思っていたといいます。

    【解説とツッコミ】
    さっきの薫君のカッコ悪すぎる態度の原因は、自分への自信の無さだったんですね。

    真の夫婦関係ではないという負い目が自分自身を恥じる気持ちにつながり、こればかりは相手に恨み事を言うわけにもいかず、ただ自分が情けない、となるばかりです。しかもそういう自分の心の中の羞恥心が、隠そうとしてるのに、どうしても四の君への態度に表れてしまっている点がまた恥ずかしい、という自己嫌悪スパイラル。

    こういう自己嫌悪スパイラルは私も経験があります。一度陥ってしまうと、これはもうどうしようもない。

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