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    99.はかなきめぐりあい〜100.心安き権中納言

    • 2015.03.09 Monday
    • 23:39
    JUGEMテーマ:古典文学

    99.はかなきめぐりあい

     光君は我慢できなくなって「もしあの女主人が薫君でいらっしゃったら、私の事も変だと見覚えがおありになるのではないか」と思うと、この顔を見せたいと思って小柴垣のそばまで歩いていきます。

     屋敷の中でも女主人が「変だ。人の気配がしたわ」と思い、簾を下ろして外の様子をうかがっていると、たいそう清らかで優美で、この上なく上品な男性が顔を出したので、見覚えはないものの妙に目をひきつけられるものがあったのでした。

     女主人(実は薫君)は、かつて男として世間に出て交際していたので、身分の高い人々で見知らぬ人はいませんが、外に立っている男性はかつて見た事のある人ではありません。かといって身分が低い者とも見えず、自分が男姿であった時の鏡に映る姿形に何となく似ています。
     思い出してみると「これが最後だと思って光君とお会いした夜、光君がひどく泣いて、本気ではないがそっぽを向こうとなさったけど、その時の顔に似ていること」と、ハッと思い出されますが、あまりに不意の事だったので「光君の姿が女から男に変わったのだろう」とは思いもよりません。

    「世間にはこういう人もいたのだなぁ」と目もくらんで見ていると、この女主人(薫君)の前にいる女童が
    「私は宰相中将様を、世に例の無いほど素晴らしいお方だと見ていましたが、こういう素敵な男性もおられたのですね」
    と、よく男の美醜を知っている風な事を言うので驚き、奥にいる侍女を呼んで見せてみました。その侍女は

    「まぁ驚いた。あの方は、みんなが大騒ぎして探し回っている失踪した薫君でいらっしゃるようです。こうしてここに来ているのを誰もまだ知らないのでしょう。宰相中将さまもお嘆きのようですから、これこれと人に命じてお知らせしましょう」

    などと言いあっています。
    女主人(薫君)にとっては、「私が薫君なんだから、そんな訳があるわけない」と感慨深くも可笑しくもあり、涙がこぼれるので奥に入ってしまわれました。

     光君はしばし立ち止まっていましたが、屋敷内では「宰相中将様が、女がおられるような気配を見せるなとおっしゃっていたから」といってひっそりとしてしまったので、あてどなく近寄って聞けるような事でもなく、空しく嘆いておられます。
     外に出ながら、せめて「これはどなたの住む所か」とお供の人にお聞きになると、供の人は「式部卿宮のお屋敷です」と言います。
    「それでは一層面倒な事になりかねなかった」と思い、こうやって女主人の姿をのぞき見た事すら表沙汰になってはいけないと、遠慮して一言も口には出しません。

     たとえあの女性が薫君とは無関係の他人であったとしても、必ず見たくなるような、心にかかる美しい女性の面影が身にまつわりついている気がして、光君は急にはこの辺を立ち去りにくい思いがします。夕風が吹き始めたので、それでも立ち去らねばならないのがたいそう残念であり、この女性の面影が心にかかって

    「もし生き続けられたら、こういう女性と一緒になりたいものだ。今まで私は女東宮を限りない人と思い申し上げていたが、女東宮も問題にはならないほどの素晴らしい方だ」と感慨にふけっています。


    【解説とツッコミ】
    すぐ目の前にいるのに出会えない二人。たまらんですねこういうの。

    そして光君の方は、女に戻った薫君に恋心すら抱いてます。「女東宮よりも素晴らしい女性だ」ってまぁ、男尊女卑・一夫多妻の平安時代の感覚だとこれは決して変じゃなかったんだろうから仕方ないっちゃ仕方ないけど、現代の感覚からするとホント節操ねえなと思いますね。

    だいたい、薫君は光君と薫君は瓜二つの顔で、つい数日前まで光君は女の格好だったんだから、つまり光君が惚れてる女主人の顔ってまんま数日前の自分の顔なわけですよ。すごいナルシストですよこれ。



    100.心安き権中納言

     さて宰相中将は、四の君への心苦しさに落ち着いた心もなく、再び宇治をお出かけになりましたが、一方で薫君も出産予定月が近づくにつれ、全く起き上がる事もできず、ぼんやりと物思いに沈んでは日を過ごしています。

    「これが女の生活というものなのだろう。頼み所もなくつまらない日々だが」と分かってくると、
    「宰相中将は、四の君の事を私に劣らず愛していて、熱中するあまりこちらに五・六日、またあちらに五・六日と往復している。私は今まで男を待つという経験をした事は無かったが、待ち続け悩み暮らすというのは嫌になるほど気のもめる事だ。そうかといって、前の姿に返り改める事などしてよい事ではない。
    ともかくも無事に出産できたら、吉野山に行って尼になって暮らそう」
    と空想する事を毎日の慰めとしておられますが、それに宰相中将は全く気づいていません。

     宰相中将は薫君のことを「今は平和に、このようにして夫婦となっている女性」と気を許してお考えで、むしろ、これが最後か最後かと案じられる四の君の様子の方がたいそう気にかかって、浅くはなく心を分けています。宰相中将は表向きは世間の目に遠慮しているという名目で出歩きもしませんが、それがむしろ好都合と、この二人の女性にだけ通っておられます。

     宰相中将は「これまで長い間、愛は思うようにならぬと嘆き恨んできたが、その恋心が満たされたことだ」と思い、安心ともうれしいとも感じる気持ちと、心の余裕がなく苦しいと感じる気持ちの両方を抱いていました。
    そして、落ち着きなく四の君のもとから薫君のもとへお帰りになりましたが、宇治の薫君もたいそう苦しげに悩んでおられるので、「どうなるのか」と、どちらにも心を砕く思いでした。

     宰相中将が薫君のそばに横になってお話ししていると、御前の侍女たちが「いいえまぁ、今日の昼、世間で失踪なさったと評判になっている薫君様が、ここにいらっしゃったのですよ」と言っています。

     宰相中将は「変だぞ、変だぞ」とお耳になさって、わざと笑みを浮かべ「それでどうだった」とお聞きになると、侍女たちは「狩りの装束で、この小柴垣のもとにお立ちになったのですが、面倒になるといけませんので黙っていましたら、立ちくたびれてお帰りになってしまいました」と言います。

     妙な気がして薫君に「本当ですか。ご覧になったのですか。誰の事をこういうのですか」とお聞きになると、薫君は
    「まだ見た事のない人がいましたが、侍女たちがそう言うらしいので、もしかしたら私の心が身を離れて形を成したのでしょうか」と微笑んで答えるものの、涙がこぼれてきます。

     宰相中将は「やはり、前の姿でいたいとお思いの心が深いのだ」と、いつものようにからかって恨み言を言い、
    「それにしても、どんな人でしたか」とお聞きになると
    「私に似ているという事で、ご想像なさいませ。知っても良い事はありませんよ」と答えて終わりにしました。

    【解説とツッコミ】
    油断しきった宰相中将。両手に花も楽じゃない。
    まぁ女性の側にしてみたらクソのような話ですが。

    個人的意見ですが、男って女よりも油断しやすい生物だと思います。
    この宰相中将の油断しっぷりを私は笑えない。

     

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