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    101.吉野到着〜103.宇治の面影

    • 2015.03.14 Saturday
    • 21:05
    JUGEMテーマ:古典文学

    101.吉野到着

     光君は、吉野山の宮の屋敷をご訪問すると、まず使いを出して「薫君のもとから参上した人がいます」と言わせました。
     吉野山の宮は、最後に薫君ご本人が訪問なさった後は何の連絡もない事を案じ、失踪なさったとか四方の山々まで騒ぎ求めているとかいう話を聞いてたいそう心配していたので、「あの最初にお使いとして来た人かしら」と喜びつつ、「こちらに」とお呼び入れになりました。

     すると、まったく薫君と同じ姿で、清らかで顔も全く変わらない男の人が入ってこられたので、吉野山の宮はびっくりして「これはどうしたことか」とおっしゃります。光君は
    「薫君は、かくかくの次第で失踪なさって二月ほどになります。こちらに時々参上なさっていたし、最後の住み家とお思いでいつも口になさっていたと告げる人がいましたので、もしや言い置いた事がありますかどうか、お伺いしたくて参りました。わたしは薫君の兄弟です」と言います。
    吉野山の宮は

    「薫君は一昨年の秋頃から、あの世までもと約束なさって、私どもの所に立ち寄り訪ね下さる事がありました。
    この四月一日頃にいらっしゃった時には、大体の世の中が心細く感じられるとおっしゃっていて、次はいつ、どういう時に来るなどとは言い残しなさらずにお帰りでした。

    ただその時、『六月下旬、七月上旬を過ごす事が極めて難しく思えるから、そこを平穏に長らえた命が無事か否かを、七月下旬辺りに必ず、吹く風に乗せてお便りしましょう』と約束なさっていましたから、今頃薫君は身を慎まねばならない時期なのだろうなぁと想像していました。

    朝夕の念仏のついでに、かならず思いをはせるようにしていますが、現世で無事ではおられるようです。
    実際、現在のあなたはご心配で、不安のあまり胸のふさぐ思いでおられるでしょう」とおっしゃいます。

    光君はそんな吉野山の宮を頼もしく思い、
    「兄弟といっても、たくさんはいません。わずか二人だけですので心細く、それなのに事情も分からず失踪してしまわれたのはやり場もなく悲しい事で、他に例の無いほど嘆いています。さらに、老い朽ちた親が死にそうに嘆いていますのが身にこたえています。」といってお泣きになります。

    宮もたいそう涙ぐみなさって、
    「我が身の束縛となりそうな頼りない子に対してさえ、親の恩愛の情愛は強いものだとお釈迦様までもが説いておられますから、ましてあれほど優れた薫君の様子ですもの、親が嘆き悲しむのも当然の事ですね。
    でも、きっと探し出しなさるでしょう。ご心配なさいますな」と、たいそう頼もしげに申し上げなさいます。

    【解説とツッコミ】
    まずは吉野山の宮のところに行ってみたけど手がかりなし。
    ただ、吉野山の宮は予知能力と感知能力があるので、薫君は死んではおらず、きっと探し出すことができると予言します。



    102.吉野山の宮の予言

    吉野山の宮は「それにしても素晴らしい人相をなさっていますなぁ」と、首をかしげては「これは、我が娘達に縁のある人でいらっしゃるようだ」とご覧になります。ともかくうれしく頼もしくて、土地にふさわしい御食事などを趣向をこらして差し上げ、昔からのお話などをこまごまと申し上げなさると、光君も万事慰められる思いです。

    光君としては、急に男姿に戻って、薫君といつしか入れ替わったかのようにしているのも実に具合が悪いですが、しかしこういう姿になったからには、以前のような引っ込み思案ではいられません。
    それに、手紙を送ると薫君が吉野山の宮に言っていた時期も、もうそんな先ではありません。ここで京に戻ってしまって「手紙の内容はこうでした」と間接的に聞くのでは心もとなく感じます。

    光君は、「薫君が手紙を送ると言っていた時までここにいて、お手紙を待とう」と考え、その旨を吉野山の宮に申し上げました。
    宮は、「それはうれしい事です。では、ここにいらしてお待ち申し上げてください。手紙を送ると言っていた約束を、薫君は決して破ったりはしますまい」とお返事されました。
    光君は喜びつつ、父君が自分までも失踪したと誤解してお嘆きになったら大変な事になるので、母君に

    「七月上旬には必ずお便りすると薫君が言い置かれた所にやってきて、不慣れな男姿に少しなじんでいる間、そこに滞在しています。不安にお思いにならないでください。
    申し上げておいたように、ただ、私がいるかのように扱ってください。女東宮からお手紙がありましたら、病気になりましたと、そんな理由でご返事申し上げてください」
    などと詳しくご報告されます。

    母君は「どうなることか」と胸をとどろかせ、心も上の空という状態だったのでたいそう嬉しく思います。ただ、浮世離れした所に光君が長居しておられるのも心配で、
    「世間並みでなく変わった人達だこと」
    とお泣きになり、
    「やはり生きておられる限りは、出家しようとはお考えなさらないように。行くあてのない私をお見捨てになったら、かえって仏教上の罪になりましょう」
    などと手紙に書いて、お召し物やら何やらと色々な品物を差し上げなさいました。

    光君のお供には乳母の子供が一人と身分の低い者が一人いましたが、光君はこれまで女として過ごしていたので、これはいい機会だと男の学問である漢詩文を習ったりしています。
    光君は「吉野山の宮はよい学問の師だ」と思い、世間普通でない身の有様などを申し上げると、宮は

    「ごもっともです。薫君も同じ事で憂いていた事をほのかに聞いております。
    ただ、これはちょっとした運命の巡り会わせで、しばらくそういう男女逆転の心が身に付いてしまわれたのです。私の予知では今頃、薫君は本来の性別である女の姿にお戻りのようですから、大変良いことです。
    あの方は、天皇の母の地位に就かれるべき人相をお持ちの人です」

    と申し上げます。

    【解説とツッコミ】
    吉野で薫君からの手紙を待つ事にした光君。
    一方、吉野山の宮の予知能力はいよいよ冴えわたり、薫君も今頃女に戻っているはずだと自信満々に断言します。そしていずれ天皇を産むことになると。なんなんだこの人は。



    103.宇治の面影

    光君は、宇治で一目見た女性の面影を心に抱き続けていて、「もう一度会える時があるだろうか」と思うと心が苦しくなり、こう詠みます。

     妹背山 思ひもかけぬ 道に入りて さまざま物を 思ふ頃かな
    (吉野山まで意外な運命の道をたどる事になって、色々と物思いする今日この頃だなぁ)

    帳台の中から出る事も難しいような女の生活に慣れていた身が、どうなるかも分からぬ山で暮らす事になるとは全く思いもよらず、我ながら実に不思議です。女東宮にお目にかかる事ができず、距離を隔てて過ごす夜はしみじみと物思いしがちでなかなか眠れません。
    でも、そんな中でも不思議と、宇治の川波の響きと共に、あの宇治で出会った女性の面影が浮かんできます。
    光君は、たいそう恋しく、また逢いたい気持ちがこみあげてきて、

     一目見し 宇治の川瀬の 川風に いづれのほどに 流れ合ひなむ
    (一目見た宇治の川瀬を吹く川風のように、偶然出会った女性に、いつまた逢えるのだろうか)

    と詠んで泣いています。

    【解説とツッコミ】
    女東宮と逢えないのは寂しいし気になるけど、それでもやっぱり気になるのはあの宇治の女性!
    昔の自分と瓜二つの、あの女性!

    うぇぇ。やっぱりわかんねぇこの感覚。自分とそっくりの女性に惚れるというこの感覚。

     

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    • 2016.04.30 Saturday
    • 21:05
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      コメント
      興味深く一気に読んでしまいました笑。本題ですが、103の宇治の面影以降の訳はないのでしょうか。読みたいです。
      • 内藤 聡
      • 2015/12/11 8:52 PM
      大変わかりやすく、ツッコミも楽しませていただきました。
      1日で読み切ってしまったほどです。
      お忙しいことと思いますが、続編を楽しみにしています。
      • いばら
      • 2016/01/16 8:45 PM
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