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    104.右大将の出産〜105.母として妻として

    • 2015.03.22 Sunday
    • 23:02
    JUGEMテーマ:古典文学

    104.右大将の出産

    宇治の薫君はたいそう苦しげな様子が続き、そのまま月も七月に変わると、宰相中将は薫君のそばを瞬時も離れず「どうしようか」と懊悩しています。
    薫君の人となりは、容貌をはじめ、全てに匂い立つような愛嬌がありずっと見ていたいと感じます。しかも、男として態度や様子を華やかにするのに慣れていたので、そんなに上品ぶったり引っ込み思案でうっとうしい感じだったりはしません。性格はにこやかで明るく親しみ深く、物を思い嘆いていても一途に思い沈んでいるというものではありません。

    泣くべき時は泣き、おもしろくふざける時は笑い、言いようもないほど可愛らしく愛嬌に満ちておられる薫君が、心底、心細く苦しいままに、ひどくだるそうになよなよと苦しげにしているので、見ている宰相中将の内心としては「私の命と代えても、この人をなんとか無事に」と惑乱しています。

    その効果があったのか、七月一日に、思っていたよりも予定が遅れて、光るような男の子が産まれました。そのうれしさは、世間普通の喜びようではありません。

    子を産んだ薫君は手ずから子をそばに寝かせて、目も離さずお世話していて、その様子はしんみりします。知り合いで乳の出る人を乳母として迎えました。しかし、せっかく生まれたかいもなく「生まれたこの子を世間に披露できたら、乳母にもどんなにしっかりと扱われる事だろう。万事人目を避け隠れているのでは仕方ない」と宰相中将も残念に感じていて、この頃は他を顧みず、お子の世話に熱中して、ほんの少しも外出しません。

    宰相中将は、日が経つにつれ可愛らしく美しくなっていくお子を母の薫君のもとに差し寄せて見比べては、自分と薫君の間に深い契りがある事を示して、「昔からこういう風に、悩みなく暮らしていられたら良かったのに」と言いだします。

    薫君は「本当に」と「変わった身の上だった」と考えて、以前四の君が出産した七日目の産養のお祝いの宴会の夜に、四の君の寝所で宰相中将の扇を見つけた時の事などを、薫君も晴れ晴れとした様子で話題に出しはじめて、お互いおかしくも感慨深くも感じています。

    【解説とツッコミ】
    無事ご出産おめでとう薫君。
    子供が生まれて吹っ切れたのか、もう完全に女モードに入った薫君。かつて自分が男だった時に、宰相中将が妻に夜這いをかけた現場に踏み込んだ事も、今となってはすっかり笑い話に・・・って笑い話なのかそれ!?

    もうこの人ら、人間関係ぐっちゃぐちゃになり過ぎて感覚麻痺してねえか?



    105.母として妻として

    今まで薫君は「なぜ我が身を女に戻してしまったのか」と思い乱れておられたから、宰相中将は「薫君がもとの男姿に戻ってしまわれはしまいか」と心配で落ち着いていられませんでした。
    しかし、このような様子で十何日も過ぎたので、宰相中将は「もう今はこのまま行けるだろう」と、すっかり安心してしまいました。
    薫君はこの若君をたいそう愛しいとお思いで、いつも抱いて世話をしておられるので、宰相中将にしてみれば「この子を見捨てて離れはしまい」と思う期待も加わります。

    もう一人の愛人、あの四の君の方は、この世に生きてはいるが身を代えたかのように悲しく辛い事を思い込んでいるので、「そちらのご出産もそろそろではないか」と思うと、そちらに行って泊まる事もできないのが悲しく気がかりです。

    「あの女性が空しい骸となりそうなのは、誰の責任でもない、みな私の罪だ。全く知らん顔をしているのも無情な仕打ちなので、どうなるにしても最後までお世話し見舞いたいと思う。
    しばしの間も気がかりで落ち着かないものだから、こっそりここにお迎えしようと思うが、どうだろうか。あなたは見放しなさった人だけど」

    と宰相中将が言い出したのを、薫君は「あきれた事だ」と思いますが、さりげなく取り繕って

    「本当に、そうお思いあそばすべき事ですものね。ただ、私が以前に夫だった男だと四の君に見破られるのが、他の人に見破られるよりも恥ずかしゅうございます」

    と、顔を赤らめて言います。その様子が華やかで愛らしいので、宰相中将は微笑んで
    「いやなに、しばしの間も心配したくないと思っただけだよ」と言い紛らしてしまいます。

    今は薫君はもう安心だと見きわめたものだから、宰相中将は四の君に対して感じている申し訳なさを、四の君に一途に心を移す事で隠し通しており、四の君の生活の支援をする様子もすっかり板についてきました。一方で四の君の父右大臣は、大げさな誓いを立てて娘を勘当したきり、全く生活の支援をしないでいます。

    四の君の母は幼い時から、父右大臣が四の君を溺愛し過ぎるのに遠慮して、もともと娘に対する格別な愛情は無かったようです。
    「まさか四の君が右大臣に嫌われるなんて意外だった」とうめいていて、我が身に代えても四の君に付き添っていようとはしません。
    兄弟の方々も、並ぶ者のない四の君に対する寵愛ぶりにみな今まで遠慮していたので、四の君が父右大臣の怒りを買って勘当されるという大騒ぎにも、特に可哀想だとも思わない状態です。今の四の君の境遇は、全く気の毒で悲しげなものでした。

    どうしようもなく、宰相中将に全てをお任せしてこっそりお世話されている四の君は、気の毒なほど心身ともにうちしおれていて、その哀れさは実に見るに耐えないものでした。昼なども、宰相中将が静かにじっとそばに付き添っては色々と慰めの言葉を言い、将来を約束し語らっているのを、どうしようもなく気丈にはなれない様子でただ言われるがままになっていて、その様子の愛らしさは他には例の無いほどでした。

    この頃では、宰相中将は四の君のもとにばかり付き添って、万が一夜中に出産という事もありうるので、遠く離れていたら急な様子も聞くことはできないからと、宇治の薫君のもとへは長く滞在しません。お手紙だけは一日に何回も絶え間なく届くのですが、それだからといって薫君はちっとも嬉しい気持ちにもなりません。

    「所詮男心はこのようなものだ。結局私一人だけが、万事につけ嘆きの絶えぬ思いをする事になるのだ。大体、世間では傍らに立つ人もないくらいに出世した我が身だったのに、不本意にも世間から身を隠す事になり、だからといってそれで状況が良くなったわけでもない。こんな風に、男を待ち遠しく思って日を過ごすばかりというのも、やはり本来のあるべき生活とも思えない。

    右大臣は、世間の人の話題になっている間だけは、しばらく四の君を勘当なさるのだろう。でも、世にないほどかわいがっておられる娘だから、いつかは一挙に勘当をお許しになるだろうし、そうなれば、高貴な実家の力が背景にある四の君の側に宰相中将はますます惹きつけられるはずだ。

    一方で私は、どうしても自分の正体を人に知られて暴露されるわけにはいかないから、宰相中将以外に頼る事のできる人はいない。
    私はこの宇治橋の番人のように、網代に氷魚が寄るのを数えるように、宰相中将の来る夜を空しく数える苦労をするばかりだろう。
    そうかといって、もとの男姿に戻ることもできない。結局は何とかして吉野山に入って、尼姿で来世の事だけでも祈念するようにしよう」

    と薫君は決心しますが、そうはいってもこの若君を捨てる事になるのが辛く、憂き世の束縛が強まる気がします。

    【解説とツッコミ】
    この物語ではもう幾度となく繰り返されてきた「油断しきった男と、密かに刃を研ぐ女」の構図。
    「子供産まれたから、もうバカな事は考えないだろう」という宰相中将の舐めきった態度が腹立ちます。そしてついには「四の君を放っておくのも可哀想なので、この家に呼んじゃってもいいかな?」という薫君を馬鹿にしきった最低の提案をしてくる始末。

    もう薫君の中では尼になる意志は固いのですが、今度はかわいい息子の存在が決意を鈍らせる。
    薫君の苦悩は終わらない。

     

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