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    106.権中納言の愛〜107.吉野山への文

    • 2015.03.29 Sunday
    • 23:36
    JUGEMテーマ:古典文学

    106.権中納言の愛

    7〜8日経って、薫君の所にいつものように宰相中将がいらっしゃって、さすがに隠し立てもせず四の君の様子や、思わしくない病状などを愚痴っぽく語りますが、薫君としてはそれを聞くのもかえって嫌な気がします。むしろ、さも他人事であるかのように取り繕ってくれればそれで済むのに、宰相中将は一向に四の君の事を他人のように分け隔てたりはしないのです。

    薫君は「どうせもうすぐ尼になるわけだし、もう幾晩も一緒にいる人ではない」と思うので、それでも宰相中将に対して表向き心を込めて応対していますが、その献身的な様子を見て、一体誰が薫君をいいかげんに愛するでしょうか。薫君に対する宰相中将の思いは、限りない愛情にさらに愛情を重ね加えて、ひとかたならぬものがありますが、いかんせん宰相中将の人柄が軽はずみで、どの人にも惚れっぽい性質なので、薫君には浅くしか受け取れないのでしょう。

    「いつものように、こちらにもしばらく滞在なさるのだろう」と薫君が思っていると、夕方、京から使いが来て「四の君の容態が悪く、いつもより苦しそうになさっているので、おそらくご出産でしょう」と宰相中将にささやき申し上げました。
    たちまち宰相中将は平静さを失い胸を痛めるのですが、「日頃あちらにい続けて、今日またすぐ戻るというのも、薫君がどうお感じになるだろうか」と気が引けるので、薫君に対して恐縮で申し訳ない気持ちです。

    とはいえ、たとえ薫君が一時的に私を見限っても、薫君が生きていればいつかは、私のずっと変わらない愛情を見直してくださる時も来るだろう。
    一方で、あちらの四の君をもう一度見ないでもし死なせてしまったら、やはりどうしようもなく悲しい事なので、この事情を薫君に説明して急ぎ出発しようとします。
    薫君は「本当にごもっともですわ」と気軽に言いながらも、

    「あきれるほど風変わりな性格の私が男の姿をしていた頃、私が女性から恨まれる事はあっても、それで私が不愉快で胸安からぬ思いをする事はなかった。しかし、こうして女の姿になると、今度は逆に男を恨んでしまっている自分がとても嫌だ。こうだからお釈迦様も、女を罪深い存在となさったのだろうなぁ。
    私が男姿だった頃、右大臣にはいつも恨まれ、四の君も恨めしげな様子を時々見せていたが、その報いで今、今度は私が彼らと逆の立場になって、こういう目に遭っているのだろう。」

    などと過去から将来まで思い合わされて、話し相手もいないから心に秘めて悩んでいるのは苦しいことでした。

    翌朝、宰相中将からは「四の君の頼りない様子がたいそう気の毒なので、どうなるかの結果を完全に聞くまで、帰らずに近くにいようと思っている。あなたの元でゆっくりもできずに、すぐ四の君のほうに戻ることになってしまったのは予想外であり、不安でもある。あなたが産んだばかりの若君の事も、もちろんそれ相応に気がかりではあるけど。」
    などという手紙が来ましたが、薫君は目にも入りません。

    「思いの深さにも限界があるものなのに、どんなにかあなた様は四の君を愛おしく思っていることでしょう」と、表向きは同情しているような文面で返事しましたが、それを読んだ宰相中将は「少しずつ女の生活になじんできた人だから、どうしようもない嫉妬心もなく、さっぱりした気性だなぁ」と判断しておられるのも、愚かしいことです。

    【解説とツッコミ】
    男と女、両方を経験したからこそ分かる両方の心情。
    でもその貴重な経験も「さっぱりした気性だなぁ」という、ただの都合のいい女として宰相中将に消費されるだけ。
    あまりにも悲しすぎるぜコレ。



    107.吉野山への文

    宇治にいる薫君は「なんとかして吉野山の宮に使いを差し上げたい」と考えます。生まれたばかりの若君の乳母として呼んだ女性は思慮分別があって「この乳母は若君の事を親身になって心配してくれているし、親密に相談したら他人に口外などしないのではないか」と思えたので、薫君は親しみをこめて語らうようになりました。

    「あなたとお会いしてそれほど日は経っていませんが、若君を思う気持ちは決して浅くはないと信頼感が深く湧いてくるのですが、これから私が申し上げる事を、他人には絶対に秘密で聞いてくださいますか」

    と、たいそう親しみを込めて薫君がおっしゃるので、乳母は「うれしく素晴らしい事だ」と思いました。

    「どうしてお断りいたしましょう。身を捨てよと仰られても、お言葉の通りに致します」

    「ここにいる人たちにも、まして宰相中将様には知られたくないのです。吉野山の奥におられる宮に、お手紙を差し上げなければならない事情があるのですが、方法を工夫してくれませんか」

    「いとも簡単なことでございます」

    そう乳母が申し上げると、薫君はうれしく思い、吉野山の宮に宛てて

    「この何ヶ月かお元気でいらっしゃいますか。どうなる事かと心細い気持ちでおりましたが、今日までは私も何事もなく元気でおります。以前ご覧になって頂いた姿とは変わっていますが、なんとか参上したいと存じております。」

    と手紙を書くときっちり封をして

    「これを吉野山の宮のところに届けて下さい。それでは確かに頼みましたよ」

    と言って乳母に渡しました。薫君の正体が誰であるかを知っている人は居なかったので、「かの吉野山の宮には娘御がいたと聞いていたが、もしや、この方がその娘御なのではないかしら」などと乳母は勝手に推測して納得しています。

    こんな話をしていたのは八月一日頃の事です。乳母は自分に親しく仕えている侍にしっかりと教えて、手紙を吉野山に届けるよう伝えました。

    【解説とツッコミ】
    さぁ薫君の反撃がはじまります。まずは吉野山の宮に何とか連絡を取らねば。運よく口の固そうな乳母も見つかりました。
    薫君の出産は七月一日頃だったので、これが生後一ヶ月くらいの頃ですね。さぁどうなる。

     

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