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    114.権中納言への愛〜115.若君との別れ

    • 2016.04.10 Sunday
    • 23:28
    JUGEMテーマ:古典文学

    114.権中納言への愛

    宰相中将はいつものように、ちょっと寄ったという風情で宇治の屋敷にお戻りになりました。薫君は「これが最後」と思っているので、全く憎らしいと思っている顔つきは見せず、身だしなみを良くして限り無く美しい姿でおられます。

    薫君は、紅色の下着の上に女郎花色の上着と萩色の羽織をお召しです。一時はお痩せになりましたがこの頃は回復なさったので、たいそう華やかに美しさをまき散らしたようです。髪もつややかに物の影が映るほど豊かに肩にかかり、背丈に少し余った末が、ふさふさと扇を広げたように広がっているその裾の具合や垂れ具合は、八尺もあるような長い髪よりもなるほど素晴らしく見えます。

    額髪から垂らしてある髪の分かれ目や額の形、姿形など、ここが悪いというような欠点はなく、見ているだけで辛い悩みも晴れ晴れとし、悲しみも忘れてしまいそうになるので、宰相中将はまことに満足できる気分です。

    「子供を産んでから一層美しくなられましたね。確かにかつての男姿も素晴らしくはありましたが、全く比べ物にはなりません。この上なく美しい女姿になったので、この姿で内裏に出仕して人々と交際したら、見る人はみな心が惑ってしまうことでしょう」
    と、限りない愛情をこめて薫君をかき撫でておられます。

    病の身代わりになってあげたいと思うほど深かった四の君への愛情も今はもう失せたかのような様子で、宰相中将が薫君と余念無く語らって臥していると、そこにまた使いの者がやってきて

    「ただ今、もう最後のご様子で、四の君様はお亡くなりになってしまいましょう」
    と告げました。

    使いが来るたびにすぐに驚いて帰るというのも、薫君に気の毒でよくない事とは思います。しかし、「本当にまずいという様子が見えたら告げに来い」と言いつけておいた人が、使いの者の後に走って参上してきているので、宰相中将はさすがに我慢ならず、

    「とにかくただ、落ち着くまでの間です。もう生き永らえそうもないような女性なので、薄情者だったと死ぬ間際に思われたくないのです。あなたはたいそう万事を理知的に判断し、妙な嫉妬心などがない人だから安心だし、このように説明したら理解してもらえるのは嬉しいことです。ともかく、あちらの女性を看取った後の私の心を見定めてから、恨んだりお叱りになったりして下さい。」

    と涙を落として辛そうに説明します。
    薫君は「このままズルズルとこの状況のままでいたくない」と決心しているので、そんな宰相中将の様子を見ながら

    「何で四の君の事を気にしようか。男心なんてこんなものだと前々から分かっていたし、宰相中将は当然こういう対応をしてくると前から思っていたが、かつて変な男姿をしていたという私の秘密を他人に知られてしまうよりはマシだと考えて彼に身を任せていたのだ。このまま生涯を終えるものと思っていたら、憂鬱で癪にさわってならないだろうけど。」
    などと考え続けています。

    薫君はわけもなく美しく微笑んで
    「あなたは毎回毎回私にご弁解なされるけど、あなたご自身の気持ちはもう決まっていて、それは私が何と言おうとどうせ変わらないのでしょう?そう思っている事にご自分でも気付いておられるのに、形だけ弁解するのはかえって変ですわ。結局、私は何も知らない方が、あなたにとっては都合がいいのでしょう?」
    とおっしゃいますが、それはひねくれて恨み言を言われるよりも恐ろしい気がします。

    そう言われた宰相中将は「あなたの方から『早く行け』と、きっぱりお声があったら出かけるようにしよう」などと言って一向に出発しようとしないので、「では早く。あちらがお気の毒ですから」と薫君が言うと、宰相中将は薫君の怒りが恐ろしい気はするものの、出発されました。

    それでもなお宰相中将が、ふり返りふり返り、お出にもなれずご覧になっているので、いつもと違う顔色を見せまいと薫君はこらえていますが、宰相中将がお出になってしまうと、薫君は若君を抱いて少しも眠らず一夜泣き明かしたのでした。

    【解説とツッコミ】
    この回は鳥肌もんですね。私は男なので分かりませんが、ダメ男だけどどうしても憎みきれずに、ズルズルと関係を引きずってしまう女性の心境ってこんな感じなのでしょうか。

    例によって二股クソ野郎全開の宰相中将。今にも死にそうな四の君の前にいる時は「あなたの病気を代わってあげたい」などと言っておきながら、美しい薫君を見るとそんな心はコロッと忘れてしまいます。

    でも、使者が「四の君もうヤバイ、もう死にそう」と何度も催促してくるので、「あいつもう死にそうだし、これで薄情者と思われたまま死なれちゃったら、ちょっと後味悪いじゃん?オマエ理解のある女だから、俺の立場も分かってくれると信じてるぜ。あいつ死んだ後でも俺がまだ浮気するようだったら、その時は怒ってくれていいよ」などという、耳を疑うようなクソ鬼畜発言で薫君を説得しようとします。

    しかし薫君は、他に選択肢がないためにやむを得ず宰相中将に従っていた以前の薫君とはもう違うのです。もはや彼女には男の身勝手と戦う手段があり、決意も固めている。「もうどうせコイツ二度と会わないし」と思うと心にも余裕ができて、嫌味たっぷりに「どうせ私が何と言おうと一緒なんでしょ?」と強気の返答です。気分がスッとしますね。

    これには宰相中将も「普通に怒られるよりも怖ぇ」とビビりますが、「この女は俺以外のところには行けない」という油断と驕りがあるので、「いや〜、お前の方から『行け』と言ってもらわないと俺出発できねえよ」などと、これまた最低の発言。
    これは要するに「出発したのは俺の意志じゃない、お前が行けと言ったから俺は『嫌だけど』出発したんだ」という形を作ったんですね。自分が出発したのを薫君のせいにさせたんです。最低ですね。

    で、私が凄いなと思うのはここからで、これだけ宰相中将がクソのような自分本位発言を繰り返しているのに、薫君は宰相中将が出て行くと一晩中泣くんです。
    仮に次に出会うとしても別人としてなので、二人が恋人として会うのはこれで最後なんです。これが最後という、本来なら重大なお別れの場なのに、そんな事を全く知らない宰相中将はお気楽クソ発言を連発して、未練たっぷりな演技をしつつ明るく去っていきます。

    そんなお気楽で無邪気でアホな宰相中将の事を、薫君はそれでも憎みきれなかったんでしょうね。
    ホント何なのよこのバカ!私の気持ちも知らないで!何が「お前は妙な嫉妬心がないから安心」だよバカ!死ね!ダメ男!
    などと悪態をつきながら、二人の間に生まれた子供(この子とも間もなく別れなきゃいけない)を抱いてぐちゃぐちゃに一晩中泣きまくったんだろうと思います。



    115.若君との別れ

    翌朝、宰相中将からの手紙には「この夜中あたりに、やっと出産という事になった。相変わらず頼りなさげな様子だ。もう少しどうなるかを見届けてから、すぐそちらに参上しよう」と書いておられました。

    薫君は「承知しました。お聞きしていたよりも安産のようですね。それにしても、以前私が出産した時の事がしみじみと思い出されます」と御返事をお書きになり、「今が出発にはいい時期だろう」と思い吉野山の宮に連絡を取る一方で、一日中この若君をずっとお抱きになっては、こっそり泣いたりしておられます。

    その夕暮れ、光君が宇治の屋敷のそばにおいでになって薫君と連絡を取りました。
    以前の時のように光君を乳母の私室にご案内して、人々の寝静まるのを待ちますが、その間、薫君は平静でおられず内心動揺はしているものの、乳母にもその気配を見せないようにしています。ただ若君をずっと見守って、「子を思う道にふみ迷って悲しい」と真剣に考えているうちに夜も更けたようです。

    人々が寝静まると、乳母は自分の私室まで来るようにと薫君にご連絡申し上げます。薫君は心も落ち着かずに懊悩していて、

    「では、この子をしばし」

    と若君を乳母に抱きかかえさせます。すると若君が目を覚ましてお泣きになったので、薫君はそれを見守りつつ、自分の身体を分けて残していくような気分でご出発になりました。

    人間の感情の中でも、子を思う親心は道の闇にも例えられるほど何よりも代え難いものであろうに、そこできっぱりと若君を置いて出発できるのは、男姿で慣れてこられた名残の、気の強さがあるからでしょう。

    【解説とツッコミ】
    これは泣けるなあ・・・。新生児を置き去りにして出発しなければならない薫君の苦悩はいかばかりか。
    ホント、いかんよ宰相中将。もっと責任もって行動しないと。

     

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    • 2016.04.30 Saturday
    • 23:28
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      コメント
      最初に出会ったとき、面白すぎて徹夜で読みました。
      くだけたツッコミがあることで、より登場人物の心情がリアルに身近になって、古典とは思えないほどするする入っていくというか。

      最近、「好きなものの作者には気軽に感想を伝えろ」という話にハッとして、もう遅いかもしれないけどコメントすることにしました。
      更新を楽しみにしてます…!
      • 3年くらい前から読んでます
      • 2018/05/25 10:48 AM
      漫画から原作を知り、文章で原作に近い内容を知りたいと思いこちらを拝見しました。ツッコミを交え理解しやすく楽しめたので、最後まで読めないことが残念で仕方ありません。更新があればと期待しています。
      • のの
      • 2019/07/24 9:34 PM
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